被災したら 歯磨き二の次にせず

被災したら　歯磨き二の次にせず

1995年（平成7年）の阪神大震災では、223人もの人が肺炎で亡くなった。
特に糖尿病などの病気を抱える高齢者は危険とされる。
金沢医療センター歯科口腔外科の中尾治郎部長は「もともと口の中に細菌が繁殖しやすいところへ口腔ケアがおろそかになると、誤嚥性肺炎が起きやすくなる」と指摘する。

避難所生活では、まず食事や暖を取ることに必死で、歯磨きはどうしても二の次、三の次になりがちだ。
「これにストレスや寝不足などが加わると、口内に細菌が繁殖する条件がそろう」と中尾部長は解説する。

怖い誤嚥性肺炎

生命に関わる誤嚥性肺炎は、繁殖した口内の細菌が食べ物や唾液などと一緒に誤って気管にのみ込まれ、肺に達することによって起こる。
避難所生活の疲労が免疫力を下げ、重症化する危険度を押し上げる。
もちろん歯周病や虫歯の発生、悪化を招かないためにも、口の中のケアは大事だ。

歯ブラシが手に入らない被災直後でも「手元にある物でできる限り食べかすと歯垢を取り除いて」と中尾部長は町長する。
ガーゼを指に巻いたり、ティッシュペーパーやタオルを湿らせるなどして歯の表面をふき、歯肉をマッサージする。
何もなければ指でも良い。
水がある程度手に入るなら、うがいで口内の洗浄を。
1回分を少量に抑えて回数を確保しよう。

食事をきっちりと

中尾部長は食事の取り方にも注意を促す。
のべつまくなしに何か食べるのは菌に絶えず栄養を与えることになる。
できるだけ決められた次官と回数を守って食事しよう。
よくかんで食べるのも大事だ。
殺菌効果のある唾液の分泌が促される。

過去の震災の教訓を元に、東日本大震災の被災地には、全国から食料や毛布と共に歯ブラシが届けられている。
これが避難所に行き渡ればひとまず安心だが「問題は自分で歯磨きできない高齢者だ」と中尾部長は話す。

能登半島地震後には石川県歯科衛生士会が被災者向けの巡回口腔ケアを行った。
東日本大震災では避難所や被災者の数がけた違いに大きく、困難も予想されるが、中尾部長は
「できるだけ早い段階で組織的なケアが行われるべきだ」と強調する。


北国新聞（平成23年3月25日：朝刊）


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