トヨタ 試練の年
急激な円高 打つ手なく
工場爆発 熊本地震 大規模減産も響く
トヨタ自動車の2017年3月期連結決算が、5年ぶりに営業減益になる見通しとなった。
4割減と大幅な減益を見込む最大の要因は為替の円高傾向だ。
ここ数年の好業績を支えた円安の恩恵が吹き飛び、一転して経営の重荷となる。
熊本地震に伴う4月の生産休止も影を落とす。
トヨタにとって試練の1年となる可能性が高い。
ーー 大幅減益の見通し ーー
トヨタは対ドルで1円の円高になると、営業利益が400億円減る。
ユーロやほかの通貨でも円高が進むと見込み、17年3月期の営業利益に対する為替変動のマイナス影響は9350億円と巨額に上る。
トヨタの場合、業界他社と眩めても影響類は突出する。
国内景気や雇用への配慮から「国内生産300万台体制」を揚げ、その半数を輸出することも為替影響が大きくなる要因となっている。
伊地知隆彦副社長は「もっと原価低減や営業努力を進める」と力を込めた。
15工場が生産休止
円高に追い打ちをかけたのが熊本、大分両県を中心に相次ぐ地震だ。
グループのアイシン精機の子会社(熊本市)の工場が被災し、ドア部分などの供給がストップ。
全国に16カ所ある完成車の組立工場のうち、15工場が一時的な生産休止に追い込まれた。
3週間で工場の全面再開にこぎつけたが、約8万台の減産につながった。
今回の決算見通しには盛り込んでおらず、さらなる業績の下押し要因となる可能性がある。
トヨタは2月にも、グループの愛知製鋼の工場で爆発事故があった影響で大規模に工場を止めた。
ダブルパンチとなり、減産規模は計約17万台に拡大。
早期の挽回は困難な情勢だ。
本物か試される
16年3月期の連結販売台数は868万台と、前期から29万台減少した。
北米市場は好調だったが、景気減速を受けた新興国などでの販売は振るわなかった。
トヨタが得意とする東南アジアではタイでの販売台数(トヨタ単体)が2割減少。
トヨタ系部品メーカー首脳は「回復がいつになるか読みにくい」と懸念を示す。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一シニアアナリストは「これだけ急激に円高が進んでは、打てる手は限られる。今年はトヨタにとって我慢の年になる」と話す。
取り巻く環境が急速に悪化する中、トヨタは研究開発費や設備投資を増やし、将来の事業への種まきも続ける。
米国で人工知能を研究する会社を設立したのもその一つ。
豊田社長は、競争力強化に向けた新しい自動車設計手法などトヨタの取り組みを改めて説明。
17年3月期は「(これらの取り組みが)本物かどうかが試される年になる」と気を引き締めた。
「これまでが実力以上」 会見で豊田社長
トヨタ自動車の豊田章男社長と早川茂専務役員の記者会見での一問一答は次の通り。
豊田社長
「これまでは為替の追い風を受け、実力以上に収益の拡大局面が続いていたが、今年に入り大きく潮目は変わった」
ーー2016年3月期に過去最高益を更新した一方で、17年3月期は大幅な減益を見込んだ。
豊田社長
「これまで数年間の決算は為替による追い風参考記録だ。その風がやんだことで等身大の姿が見えてきた。真の実力を追求する意志の強さや覚悟が本物かどうかを試される年になる」
ーー熊本地震で工場が停止したが、災害時の事業継続の課題は。
早川専務役員
「トヨタが扱う部品は数十万点にも上り、優先順位をつけて対策している。
これまでの教訓を生かすのは終わりがない取り組みで、まだまだ道半ばだ。仕入れ先と連携してさらに改善を図っていきたい」
ーー人材育成の取り組みは。
豊田社長
「(組織改正を実施し)現場に近いところで決定できる体制にした。(次の社長候補は)全員が対象だ。
20~30年先の時間軸を見ながら、もっといいクルマづくりへの体質ができた段階でバトンタッチしたい」


北國新聞:平成28年5月12日朝刊 より一部コピー ↑
→【熊本地震 生産停止】
急激な円高 打つ手なく
工場爆発 熊本地震 大規模減産も響く
トヨタ自動車の2017年3月期連結決算が、5年ぶりに営業減益になる見通しとなった。
4割減と大幅な減益を見込む最大の要因は為替の円高傾向だ。
ここ数年の好業績を支えた円安の恩恵が吹き飛び、一転して経営の重荷となる。
熊本地震に伴う4月の生産休止も影を落とす。
トヨタにとって試練の1年となる可能性が高い。
ーー 大幅減益の見通し ーー
トヨタは対ドルで1円の円高になると、営業利益が400億円減る。
ユーロやほかの通貨でも円高が進むと見込み、17年3月期の営業利益に対する為替変動のマイナス影響は9350億円と巨額に上る。
トヨタの場合、業界他社と眩めても影響類は突出する。
国内景気や雇用への配慮から「国内生産300万台体制」を揚げ、その半数を輸出することも為替影響が大きくなる要因となっている。
伊地知隆彦副社長は「もっと原価低減や営業努力を進める」と力を込めた。
15工場が生産休止
円高に追い打ちをかけたのが熊本、大分両県を中心に相次ぐ地震だ。
グループのアイシン精機の子会社(熊本市)の工場が被災し、ドア部分などの供給がストップ。
全国に16カ所ある完成車の組立工場のうち、15工場が一時的な生産休止に追い込まれた。
3週間で工場の全面再開にこぎつけたが、約8万台の減産につながった。
今回の決算見通しには盛り込んでおらず、さらなる業績の下押し要因となる可能性がある。
トヨタは2月にも、グループの愛知製鋼の工場で爆発事故があった影響で大規模に工場を止めた。
ダブルパンチとなり、減産規模は計約17万台に拡大。
早期の挽回は困難な情勢だ。
本物か試される
16年3月期の連結販売台数は868万台と、前期から29万台減少した。
北米市場は好調だったが、景気減速を受けた新興国などでの販売は振るわなかった。
トヨタが得意とする東南アジアではタイでの販売台数(トヨタ単体)が2割減少。
トヨタ系部品メーカー首脳は「回復がいつになるか読みにくい」と懸念を示す。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一シニアアナリストは「これだけ急激に円高が進んでは、打てる手は限られる。今年はトヨタにとって我慢の年になる」と話す。
取り巻く環境が急速に悪化する中、トヨタは研究開発費や設備投資を増やし、将来の事業への種まきも続ける。
米国で人工知能を研究する会社を設立したのもその一つ。
豊田社長は、競争力強化に向けた新しい自動車設計手法などトヨタの取り組みを改めて説明。
17年3月期は「(これらの取り組みが)本物かどうかが試される年になる」と気を引き締めた。
「これまでが実力以上」 会見で豊田社長
トヨタ自動車の豊田章男社長と早川茂専務役員の記者会見での一問一答は次の通り。
豊田社長
「これまでは為替の追い風を受け、実力以上に収益の拡大局面が続いていたが、今年に入り大きく潮目は変わった」
ーー2016年3月期に過去最高益を更新した一方で、17年3月期は大幅な減益を見込んだ。
豊田社長
「これまで数年間の決算は為替による追い風参考記録だ。その風がやんだことで等身大の姿が見えてきた。真の実力を追求する意志の強さや覚悟が本物かどうかを試される年になる」
ーー熊本地震で工場が停止したが、災害時の事業継続の課題は。
早川専務役員
「トヨタが扱う部品は数十万点にも上り、優先順位をつけて対策している。
これまでの教訓を生かすのは終わりがない取り組みで、まだまだ道半ばだ。仕入れ先と連携してさらに改善を図っていきたい」
ーー人材育成の取り組みは。
豊田社長
「(組織改正を実施し)現場に近いところで決定できる体制にした。(次の社長候補は)全員が対象だ。
20~30年先の時間軸を見ながら、もっといいクルマづくりへの体質ができた段階でバトンタッチしたい」


北國新聞:平成28年5月12日朝刊 より一部コピー ↑
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